■アトピー性皮膚炎の治療について その1
アトピー治療の総論
一般的にアトピー性皮膚炎の治療は、目的によって方法が異なる。自分がどの状態にもっていきたいのか、を明確にする必要がある。
* アトピー性皮膚炎の症状が非常に強いため、症状を抑えたい。
ステロイドなどの薬物療法が主体で、アレルゲン除去やスキンケアを補助的に行いコントロールする。ステロイドを使用するため症状の改善も早く、症状が改善すれば短期に薬物療法を中止することが可能である。大抵の人はそれで満足することが多い。しかし、ストレス等で症状が再燃し、再度ステロイドを使用するということを高頻度に繰り返す場合があり、その場合は、気が付くとステロイド漬けに陥ってしまい、コントロールがうまくいかない状態になることもある。そのため、すべての人がうまくいくとも限らないので注意が必要である。
* アトピー性皮膚炎そのものを治したい。
その場合は、体質改善(食事・運動・睡眠・入浴)・スキンケアが主体で、薬物療法は補助的に使用する方法をとる。ステロイド等の副作用が強く「脱ステロイド」を試みるというのもこのケースに入る。うまく体質改善が行うことができれば、アトピー性皮膚炎の症状が出にくい状態になり達成される。ただし、皮膚の炎症が強い場合は、痒み等で生活への支障も強く体質改善そのものが十分行える状態にならないこともあることや、体質改善を行って効果を出すには長時間かかることもあるため根気が必要であること、場合によっては仕事をやめたり居住地を変更したりしないと達成できないこともあるなどの理由で、断念せざるを得ないことも、度々起こりうる。そのため、すべての人がうまくいくとも限らないので注意が必要である。
個人によって、生活状況・炎症の出方・アレルゲンの有無等、千差万別である。そのため、臨機応変に自分のあった治療法を選択しなければならない。
現在、日本皮膚科学会にて治療ガイドラインが出ている。
一般的に行われているアトピー治療(クスリを使用した治療)
ステロイド(副腎皮質ホルモン剤)
● ステロイド外用剤は、副腎皮質ホルモンにより過剰になっている免疫反応を抑制し、症状を和らげる効果がある。もっとも効果が高いとされる薬剤である。外用剤にはランクがあり、「Weak(弱い)」「Medium(普通)」「Strong(やや強い)」「Very Strong(かなり強い)」「Strongest(最も強い)」に分けられ、症状の度合い・炎症の発生部位によって使い分ける。ステロイド外用剤は薬局・薬店などで入手出来るものもあるが、強いランクのものは医師の処方箋を必要とする。
● ステロイド外用剤を皮膚に長期使用すると皮膚萎縮、皮膚感染症の誘発、毛細血管拡張などの副作用が生じることがある。しかしながら治療が困難な患者やアトピービジネスがその弊害を過剰に主張したり、内服薬の副作用を外用薬のそれと混同することもあり、治療現場は混乱している(ステロイド皮膚症を参照のこと)。
● ステロイド外用剤の中止によるリバウンド(急激な症状悪化・再燃)は生じないという見方が皮膚科医師の間では強い。自己判断による外用の中止・不適切なランクの外用剤の使用により症状の悪化を呈することがあり、リバウンドと混同される場面が多々ある。そのため、アトピービジネスがそれをステロイド外用剤の弊害と主張したりして、治療現場は混乱している。
● 症状が重く QOL(生活の質)が著しく低下している場合は密封塗布や皮下注射を行ったりすることもある。或いはステロイド内服薬を服用する場合もある。
プロトピック(商品名・軟膏)
● プロトピックとは、1993年から治験として使われ始め1999年6月に認可された、タクロリムスという免疫抑制剤を外用剤として製剤したもの。元々臓器移植手術の際に用いられてきたもの(商品名プログラフ)だが、その濃度を0.1%にして外用剤にしている。(小児用は0.03%である。)
● ステロイドの「medium」の強さではないかと言われている。特に顔面や頸部において効果が高いとされ、ステロイドの副作用が出やすい部位でもあることから、好んで処方される。プロトピックは分子量が大きいため、正常な皮膚には作用せず、炎症が強く壊れた皮膚にのみ浸透していくことに由来している。
● 使用開始初期にヒリヒリとした刺激感や火照りを感じる人もいるが、皮膚が慣れてくるにつれて徐々に治まってくる。
● 妊娠している方には使用禁止である。授乳中も使用できないとされているが念のためというニュアンスである。
● 塗布後に直射日光を浴びたり、紫外線療法による治療中に使用することなどは避けるべきとされている。皮膚癌の発生率が高くなるという報告があるが白人のデータであり日本人には当てはまらないとする意見もある。
● 副作用としては、ニキビの増悪がある。カポジ水痘様発疹症の発生率が高くなるとの報告がある。
● マウスの実験で悪性リンパ腫の増加があるという報告がある。メーカーでは、人間に使用した場合の影響はないと説明しているが、動物実験を根拠に危険を主張する人もいる。精確な評価には多数の使用者を長期追跡することが必要であるため、完全な結論には時間が必要と思われる。なおFDAは発ガン性への懸念から、処方を必要最小限とするように警告を出している。
保湿剤
アトピー性皮膚炎患者の皮膚は、明確な病変部位外にも、乾燥した特異な性状を示すことがある。乾燥部位からは皮脂やセラミドが失われ、外部からアレルゲンの侵入を容易にしていると考えられている。また痒みの一因ともなり皮膚の回復が妨げられている。炎症に対する治療だけでなく、このような皮膚の性状に対処すること(スキンケア)もまた、治療の根幹である。スキンケアを丹念に行うことにより劇的に改善することもあるため、ステロイド外用剤などだけでなく、保湿剤を使用することは重要である。実際の処方では、ワセリン等の油性のものや、適度に水分を含んだクリーム状の保湿剤(ヒルドイドソフト等)がよく処方される。
医療機関で処方されるものだけでなく、薬局・薬店で購入できるスキンケア製品でも効果が期待できる。ただし患者の敏感な皮膚は製品によっては接触性皮膚炎を起こすこともあり、使用感がよく、かぶれを起こさない製品を選択することが重要である。最初はいろいろ試して、自分に合う保湿剤を探索するのも良い。
非ステロイド系薬剤
● 風邪薬などの成分である消炎・鎮痛薬(イブプロフェンなど)の外用剤(アンダームクリーム、スタデルムクリームなど)を使用することがある。いずれも穏やかでステロイドほど劇的な効果は得にくいとも言われる。接触性皮膚炎を高率に起こすことがあるので注意が必要である。
● 抗ヒスタミン外用薬(レスタミン軟膏など)を使用することがある。痒みは低下するが、炎症を抑える効果は低いとされている。
その他
● 皮膚科の専門医が漢方薬を処方する場合もある。そのような場で処方される場合、顆粒状に加工されたエキス剤であることが多い。健康保険が適用される。ツムラ、JPS製薬の項目を参照。
● 痒みが強い場合、必要に応じて抗アレルギー薬・抗ヒスタミン薬を使用する。アトピー性皮膚炎の患者では、発疹→痒み→掻破行為→発疹にて悪循環になっていることが多い。そのため、その悪循環を断つという意味で痒みを抑える効果のある抗アレルギー薬は有効である。痒みのコントロールをすることは、皮膚の炎症の改善にもつながるということである。
● IPD(アイピーディー)というTh2活性阻害薬が使用されることがある。花粉症でも使われる薬剤である。アトピー性皮膚炎では、Th2細胞の亢進・サイトカインの中のIL−4・IL−5(アレルギー症状を誘発するもの)の産生の増加がみられることがあるため、効果があるとされている。効果が現れるのには数週間ほど時間がかかるという特徴がある。
● 痒みが強く睡眠がとれない場合、必要に応じて睡眠薬・抗うつ薬を使用することがある。
● 掻破による傷がある場合、亜鉛化軟膏を使用することがある。
(フリー百科事典ウィキペディア:アトピー性皮膚炎より)
■その他の記事は・・・
⇒ アトピー性皮膚炎の概要とメカニズム
⇒ アトピー性皮膚炎の症状と原因
⇒ アトピー性皮膚炎の治療について その2
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